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「な、何?、
マネージャー、どうかしましたか?。」
あまりに食い入るように見るので
綺羅が少し引いた感じて沢野を見ると、
「…………あ、
いや、………ああ、
そのようなことなのね、
ああ、
その手があったか、
わかったわかった、
そうしよう。
…………じゃっ!」
訳の分からない呪文のような
この呟きを残したまま
猛ダッシュして逃げていった沢野に、
「な、何だかめっちゃ、
気になって仕方ないんだけど……。」
綺羅が多岐川に向かって問いかけると、多岐川も深くうなずきながら、
「…………あたしも。
……………あっ!」
「な、何?、
えりささんまで!」
お昼前の沢野珈琲店では、
すでにギャルソン姿に着替えた綺羅が、
メニュー御披露目試食会の為に
会場を整えていた。
キビキビと動き回る綺羅の姿に
多岐川は圧倒されながらも
ついつい目で追いながら
一緒にセッティングの作業を
続けていた。
「えりささん、ありがと!
会場、パーフェクト!。
ボク、厨房のメニューチェックしてくるから、これ飲んで少しゆっくりして。」
綺羅は、さり気なくイスをひいて
多岐川を座らせると、
バニラの香りが優しく香るコーヒーを差し出して笑いかけたあと、
急いで厨房に消えていった。
「…………仕事は切れる、ルックスは天下一品、
タッキー、
逃すまい、逸材は。」
「沢野マネージャー、
いつから背後にいらしたんですか?。」
「今から。」
沢野はスルリと多岐川の向かいに座り、持参した梅昆布茶をテーブルに置くと、
「タッキーに、お話ししたいことが
あってさ。」
「私も、朝のマネージャーの反応が気になって、おたずねしなきゃって思ってました。
何か、ありました?」
「えっ?、何?、
アタシの何か、気になった?。
あ、そうか、
強いて言えば、
…………綺羅君がタッキーのお気に入りのシャツ着て出勤してるということ?。」
「!!!!!!!!!!」
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