どうしても…ダメか………

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どうやらオレは、この世界で『アスナ』として生きていくことになったらしい。 神様が言っていた転生とは、そういうことなのだろう。 …赤ん坊からでは無かったか?………まぁいいか。 「あなたもそんな風に軽口を叩けるようになったのね?……素直なだけじゃ生きていけない。よく考えてるじゃない」 優しい眼差しでオレを見つめる母親。 彼女の手のひらから伝わる体温は、とても……暖かかった。 「えへへ…お母様!早く帰りましょう!日が暮れてしまいます!」 『アスナ』は嬉しそうに、楽しそうに母親を引っ張る。 もっと遊びたい。もっと甘えたい。もっと、もっと。 そんな『アスナ』の感情が、直接流れ込んでくるような感覚。自分まで嬉しくなるような、ただただ純粋な『幸せ』。 (オレは今から…この子の幸せを奪うのか…) そう思ってしまうのは、恐らくオレが『アスナ』として生き始めたら、本当の『アスナ』は、消えてしまう気がしたから。 この子の思い出が、幸せが。 (神様ぁ…あんた、綺麗な顔してやることえげつないな。オレにゃこの子の幸せを奪うなんて出来ねえもん) え?不良が何言ってんだって? 不良に良心があっちゃ悪いかよ。 まぁそれは置いといて、だ。 今、アスナが母親と二人で歩いてるこの道は、絶対に覚えておかなくちゃな。 アスナがいなくなって、オレが生き始めても、オレがアスナを忘れないように。 そして今はただ……幸せな親子を見守っていよう…。 ――――――
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