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「え?」
突然のことで走り出そうとしていた反動が抑えられず、手をつかんだ人物の胸に倒れ掛かってしまった。
ふわりと、日本酒のにおいが香った。
桜は慌てて離れようとするがその男に押しとどめられる。
「遅いから、迎えに着ちゃった」
見上げると無邪気に笑う男の姿が会った、それは”みつなり”でも”たけだ”でもなく、もちろん少年でもない。
「長尾!!」
「上杉殿、屋敷で待っていてくださいとあれほど…」
”みつなり”と”たけだ”の声が重なった。
「えー、でも今回は迷子にならなかったかから、大丈夫」
桜を抱きとめたまま男はニコニコしながら言った。
「当たり前です、直線距離で迷われていたらもうどうしようもないですよ」
「そう言う問題じゃねぇだろ、こんな大人数でいたら目だってしまう」
”みつなり”の後に”たけだ”が言ったとき。
ピーーーーーーーーーーーー
耳をふさぎたくなるような、けたたましい笛の音がなった。
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