163人が本棚に入れています
本棚に追加
まるで鎖のように僕を過去に縛りつけ、思い出すたびに憂鬱にさせる。
柯菜は「鎖みたいなメランコリーね」と言っていたが、まさにその通りだ。
だが過去とはそんな物だと僕は思う。
息子を失った親は、写真や部屋を見るだけで子を思い出すだろう。
思い出が多ければ多いほど、その哀しみは比例する。
過去は文字通り過ぎ去った時間だが、確かにあった時間なのだ。
哀しいのは、それほど大切な時間だったからだ。
忘れたくても、忘れられるはずがない。
棄てることなど、出来る訳がない。
もし棄てることが出来たなら、僕は薄情者なのだろう。
このどうしようもない矛盾。
だから僕は全てを受け入れ、この能力と共に平穏に生きることを選択した。
最初のコメントを投稿しよう!