第一章

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その中に一人だけ、人がいた。 若い女の人だ。 僕と同じか、1つ年上ぐらいに見える。 腰まで届きそうな茶髪をシュシュでまとめて、ポニーテールにしていた。 Tシャツにジーパンとラフな格好だが、秋では少し寒そうだ。 背はすらりと高く、柯菜の身長ではわざわざ見上げないといけないだろう。 何より美人だ。 その視線に気づいたのか、柯菜が小さな声で聞いてきた。 「悠君。今、何を考えた?」 「美人だなと思った」 「私より?」 「定規で測れば一目瞭然」 少しからかうように言ったら、本気で脛を蹴られた。 痛みで思わず涙目になりそうだ。 柯菜の言っていた「邪魔者」が彼女じゃないことを、心から祈ろう。
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