第一章

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女の人の手には今時の若者らしく、スマートフォンが握られていた。 だが僕たちに気づくと、スマホをポケットの中にしまった。 柯菜は笑顔で話しかけた。 「こんばんは、片山さん。来てくれて嬉しいわ」 どうやらこの人は片山さんというらしい。 「初対面だし、自己紹介をするわね。私の名前は柊柯菜。初めまして」 当の片山さんは、何故か驚いたような顔をしている。 何かおかしなことがあったのだろうか? 一体片山さんは何者で、柯菜が何をしようとしているのか解らない僕には、この状況を理解する術がない。 ただ黙って、話の展開を待つしかなかった。 片山さんは尚も信じられないというように、柯菜を見つめていた。 「本当に、柊柯菜なの?」 「ええ。お望みなら、ここで能力を使うけど」 そう言って、柯菜はトートバッグからはさみを取り出す。
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