プロローグ

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僕の知る限り、柊柯菜が幸せそうな顔をする時は二つしかない。 その一つは、デザートを食べているときだ。 それも格別に美味しいデザートの時だけ、柯菜は学校でも私生活でも見せることのない、もう死んでも悔いはないという顔をする。 まさに今、柯菜はそんな綻んだ笑顔を見せていた。 ここ「シャトリーゼ」の期間限定品、モン・ブラン・オ・マロンは、それだけおいしいのだろう。 名前が長いので、僕たちはいつも限定マロンと呼んでいる。 シャトリーゼは常にモンブランを作っているが、秋の季節になると限定マロンと入れ替える。 それだけ味に自信があるのだろう。 限定モンブランはいかにも王道のモンブランで、スポンジで作った土台の上に生クリームをホイップし、そこを螺旋状に栗のクリームがあしらわれている。 その上に甘露煮の栗が載せられており、多分モンブランと聞けば誰もがこの形を思い浮かべるはずだ。
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