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「ねぇ旅行どこ行く?」
「んー。言い出したはいいんだけど、いざ考えてみると色々あって困るな」
「それを相談するためにアンタの家に集まったんでしょうが」
「河合さん、あんまりお兄ちゃんに接近しないでくださいます? なんて言うか……お兄ちゃんまで腐りそうなので」
「あたしは腐ったミカンか」
「京都なんてどうだ?」
「アンタはこの流れを見てもなんとも思わんのか!」
「スルーできるお兄ちゃんも素敵。お兄ちゃん愛してる!」
「俺、清水の舞台から紅葉狩りしてみたかったんだよ! 小学校の修学旅行は台風で暴風警報が出たからってホテル待機でそのまま学校帰ったし……」
「あー。そんなこともあったわね」
「なんですか河合さん? そうやって二人しか通じない話題で私をさりげなく輪から外そうって魂胆やめてもらいませんかね? 薄汚いですよ?」
「健介なんとかしなさいよこの妹! あたしの手に負えないんだけど!」
「その旅行、私も着いて行くつもりですから。嫌だったら河合さん来なくてもいいですよ? ま、来ても私の手が滑って落とします――舞台から」
「この子、マジでヤバいわよ健介」
「いつものことだから」
「いつも!? これいつもなの!?」
「別に河合さんに私のことを分かってもらおうとか、受け入れてもらおうなんて思ったことないですから。お兄ちゃんにだけわかってもらえて愛してもらえたらそれだけでいいもん!」
「いや、あたしは別に止めることなんてしないけど」
「じゃあ来なくていいですね」
「そ、そんなこと言ってないじゃないの! 勝手に決めないでよ!」
「へぇ、じゃあドライな河合さんはどうしたいんですか? ちょっと仲の良いクラスメイトってだけで、私たち兄妹二人の水入らず旅行に首突っ込むなんて思えませんけど?」
「ぐぬぬ……言わせておけば」
「ほらほら。悔しかったら何か言ってみたらどうですか? ほら。ほら!」
「アンタほんと性格悪いわね」
「自分に素直じゃない人に、お兄ちゃんの隣を歩かせるわけにはいかないもので」
「おいちょっと待て二人とも。どうしたどうした? なんでそんな親の仇でも見るような顔して向かい合ってんだよ」
「健介!」
「え、あ、はい」
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