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「スクランブルゲーム?」
『この島で行われるゲームは大きく分けて二種類。一つはアクワイアゲーム、そしてもう一つがスクランブルゲーム』
クマのゴムマスクを被った男の説明はこうだ。
「アクワイアゲーム」はアニマル側が用意した釈放時間を他のプレイヤーと競い報酬として獲得していくもの。基本的に自分の釈放時間を失うようなことは無い。
一方「スクランブルゲーム」は他のプレイヤーとお互いの釈放時間を賭けて奪い合うというもの。負ければ釈放時間を失うことになるが、そのぶん勝つことができれば手にする釈放時間は大きなものになる。
「英語でアクワイアは獲得、スクランブルは奪取という意味…」
楓はそう呟きながら納得する。
「おいおい、スクランブルだからって参加拒否なんかしないでくれよ。俺たちはもうここで一時間以上待ってるんだ」
六角形のテーブルに座る男が苛立ちを露わにして大きな声でそう言った。40代ぐらいの男、体格は大柄で、パンパンに膨れ上がった顔に、口元には放置された無精髭。
大きな黒色の丸縁眼鏡の奥から久崎と大石を睨みつけて、切れ長のその眼は鋭く氷のように冷たかった。
「バッタさん、落ち着いてください」
隣に座る男がそんな彼をなだめる。どうやらあの男はバッタと呼ばれているらしい。
「ゲームに参加するもしないも彼らの自由ですよ」
そう言ってバッタをなだめる男は彼とは対照的に骸骨のように痩せこけた男だった。
座っているからよく分からないが、恐らく身長は185センチメートルは裕にあるだろう。縦にばかり伸びた細長い男、年齢は僕とあまり変わらない。
深く窪んだ彫りの底に魚のようにギョロつく大きな真ん丸の眼球、それがおどおどしく動いて、眼球を囲む黒い隈が余計に彼を不健康そうに見せていた。
「それで結局あんたたちはゲームに参加するの?」
バッタのもう一方の隣に座る、四人の仮釈放者の中の唯一の女が、面倒くさそうにそう聞いてきた。
年齢は20代後半程度でまだ若く、異様なまでに白い肌が目に残る。
体型は細く、整った目鼻立ちで美人と言えるが、長年手入れはされていないだろうボサボサの長い髪を掻きむしりながら、片膝を立て椅子の上に裸足の足を気怠そうに乗っけた姿から他人の目なんて一切気にしていないのだろう。
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