多人数ロシアンルーレット編

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バッタと骸骨と女。 いかにも癖の強そうな仮釈放者。 楓が「どうします」とそう尋ねるように僕の顔を覗き込む。 「………」 女の隣に座る四人目の仮釈放者、楓と年齢は同じぐらいか、あるいは楓よりも若い青年が僕らのことをじっと見つめていた。 頬にはソバカス、栗色の癖毛、ハーフのような中性的な顔は、僕らのことを静かに観察しているというよりも、緊張や不安の中でどうなるかと事を見守っているように映った。 「スクランブルゲーム…ですか」 理想を言えば、せっかく楓という協力者を得られたのだから、共に釈放時間を稼ぐことができるアクワイアゲームの方が最善のように思える。 スクランブルゲームでは楓の釈放時間を奪ってしまうことがあるかもしれないし、裏切られその逆のことだって十分に起こり得る。 しかし、一方で楓という協力者がいるからこそ、このスクランブルゲームを有利に進めることができるかもしれない。多くの釈放時間を獲得する事ができるのかもしれない。 「どのようなゲームが行われるか聞くことはできないのですか?」 僕はクマに尋ねるが、クマは首を横に振った。 『行われるゲームの内容はゲームが始まるまでお伝えすることは基本的には出来兼ねません』 つまりは賭け。どんなゲームが行われるか分からな中で僕たちは参加するか否かを選択しなければならない。 『ですが今回に限っては、ゲームの参加を決定して戴いた既にお集まりのあちらの四人のプレイヤーには、特別措置として今回行われるゲームのルール説明を30分程前にさせていただきました』 「ルールを説明したって、一体どうして!」 楓が声を上げる。確かにそれではアンフェアな有利不利が生じてしまう。 あの四人の仮釈放者は30分も前からゲームのルールを知っていた。つまり、勝つための策略や戦略をゆっくりと考えることが出来てしまう。 「俺たちは一時間以上待たされているんだ」 僕らのやり取りを聞いていたバッタがそう言った。 「一度ゲームの参加を決定すると、参加のキャンセルは出来ない。つまり俺たちは残りのプレイヤーが揃うのを待つしか無かった」 いつの間にか口に咥えていた煙草に火を点ける。バッタの口から白い煙が溢れ出す。 『皆様が所持する釈放時間はゲームで失う以外にも、あくまでもポイントでは無く”時間”ですので、現実時間と並行して減ってしまいます』
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