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現実時間で1時間経てば、釈放時間も1時間減る。
つまりゲームに参加し勝ち続けなければ、いつかはゲームに負けずともその釈放時間は消失してしまう。
『ですがゲームの進行中、或いはゲームに参加を決定し、プレイヤーが集まるのを待つなどの準備中は釈放時間の減少は停止されます』
それでゲームの参加キャンセルが出来ないのだと僕は納得した。
もし参加キャンセルが出来てしまえば、それが最善かは別として、ゲームに参加を決め、プレイヤーが集まり次第席を離れるということを繰り返していれば、現状の釈放時間をゲームを行わずとも維持できてしまう。
「それならルール説明は全員が集まってからで良かったじゃないか。これだとあまりに俺たちが不利だ」
楓はそう言うが、クマは静かに首を横に振る。
『しかし、今回に限ってはあまりに待機時間が長過ぎました』
それは僕が牢獄の中で気を失っていたせいだ。
犬村も待ち侘びたと言っていたように、バッタの言葉からすれば恐らく僕は1時間近く気を失っていたのかもしれない。
『この島には現在99人の仮釈放者がおり、ここ以外でも既にゲームが行われております。待機時間が長いということは、その分他の仮釈放者と釈放時間に差が生じてしまいます。釈放時間を得るための時間を1時間も無駄に待機してもらっていたわけですので』
「そ、それは…」
『なので待機の代償として、フェアにゲームを行ってもらうために、彼ら4人のプレイヤーには特例として事前に集まっていただいプレイヤーから個別にルールの説明をさせていただきました』
大きな視点だ。ここで行われるゲームだけでなく、99人のプレイヤーで行われている釈放ゲームという大きな視点でフェアを保つためのハンディキャップ。
『ではその上でこのゲームに参加致しますか?』
既に集まっていた四人の仮釈放は僕たちの決定を静かに待機する。
バッタと骸骨と女と青年。
ルールを事前に知っているか知らないかの差は、きっと想像しているよりも大きなもの。
「久崎さん、どうします?」
だが、僕の答えは決まっていた。いや、こうする他が無かった。
「参加しよう」
僕の呆気のない決定に楓は驚いた。
「参加するって、いやでも久崎さん、このゲーム俺たちかなり不利になってしまうんですよ。それでもいいんですか?」
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