多人数ロシアンルーレット編

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「確かにそうですが、他のゲームもきっと同じはずです」 「同じ?」 「未だにプレイヤーを募集しているゲームがあったとしても、そのゲームも待機プレイヤーへの配慮としてここと同じようにルール説明は行われているかもしれません」 それにこれから新しく始められるゲームを探すにしても、ゲームがどのような間隔で行われているか分からない今、それを見つけられる確証は無かった。 無駄に釈放時間を消費してしまう恐れもある。 「それならばこのゲームに参加する他ありません」 「確かにそうですけど…」 楓は多少の不満を残しながらもやがて僕の説明に渋々と納得してくれた。 「ではこのゲームに参加します」 僕はクマにそう言った。 これが最善の選択では無いことなんて僕にだって分かっている。 それは僕たちが参加を決定した瞬間に、バッタの口元が醜く歪んでは眉につくほどにつり上がったのを見れば一目瞭然であった。 「久崎さん、俺はあなたの事を信じます」 でもそれでも楓は僕の目をしっかりと見つめながら、自分自身にその言葉を言い聞かせるようにそう言ってくれた。 その目には決意を固めながらも不安の色が蝋燭の炎のように不規則に揺れている。きっと僕だって同じだったはずだ。自信なんて無い。楓の目からも僕が抱える不安なんてはっきりと見えただろう。 「大丈夫です。久崎さんは自分じゃ分からないと思いますけど、かなり賢いですから」 それでも楓は無理やり笑顔を見せて、僕にそう言ってくれた。 賢いだとか頭が悪いだとか、僕はその基準をすっかりと忘れてしまっている。普通ということが僕には分からない。 だから僕は楓の言葉を素直に信じたかった。楓が僕のことを信じてくれたように。 『それではゲームの参加登録を致しますので、お二人とも囚人時計をお見せ下さい』 僕と楓が囚人時計が巻きついた腕をクマの前に差し出すと、クマはそこに片手に納まるほどの長方形の薄い端末を近付けた。 その端末は一面の殆どが液晶ディスプレイで覆われ、下部に小さなボタンが一つだけ。 先ずは僕の囚人時計に近付けた瞬間、画面に僕の名前とそして現在の釈放時間が大きく表示される。 次に楓、楓の囚人時計にも同様に端末を近付けると画面には「Name:Kaede Oisi//LibertyTime:12」と表示された。 『久崎様、大石様、これでゲームの参加登録は終了です』
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