多人数ロシアンルーレット編

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同時刻、映像監視室… 最後となる久崎と犬村によるゲームのホストを務め終えたラビットが映像監視室へと戻ってきたのは、これから多人数ロシアンルーレットゲームのルール説明が始まる直前のことだった。 薄暗い広い部屋には100台近いモニターが壁一面に広がり、牢獄の中、収容所の中、それだけで無くこの島全体の至る所に設置された監視カメラの映像をリアルタイムで投影していた。 『お疲れ様ラビットさん』 モニターの前でローラー椅子に座りながら何処か愉快そうにゲームの様子を見つめるカエルの被り物をした男がラビットの姿に気が付いてそう言った。 『フロッグさん、どうですかゲームの調子は?』 フロッグと呼ばれた男はモニターから発せられる青白い光を浴びながら、何も言わずにある一つの画面を指差した。 『ほう、これは面白いですね』 その画面には丁度今から行われるゲームの様子が映し出されており、画面の下には参加者の名前とそれぞれの釈放時間が並んでいる。 『久崎トオルと大石楓…これは面白い組み合わせだ』 ラビットの言葉にフロッグは大袈裟に頷いた。 『記憶を失った男と、記憶を絶対に失わない男。実に最高な組み合わせだろ』 フロッグの笑い声が映像監視室の中に響く。 『それに、それだけじゃない。コイツだよ』 フロッグは参加者の一人を指差した。 『それは?』 『長沼ケイ…通常バッタと呼ばれる男』 フロッグは一枚の紙をラビットに手渡す。その紙には長沼ケイにまつわる情報が事細かに記載されていた。 『バッタは人を騙すことを生業にしていた虫。だがそこらの虫とは違う、他人の餌を食い散らかすまさしく害虫だよ』 長沼についての情報を一通り読み終えたラビットは納得した。彼の非道性、そしてそれだけでは無くそれに釣り合う怜悧さを。 『これは面白いゲームになりそうですね』 ラビットはもう一度画面を眺める、そしてあることに気が付いた。 『いや待てよ、これは…』 ラビットは直ぐに視界に止まったある仮釈放者の情報をファイルの中から探し始めた。 ここは収容所、全囚人の情報はアニマルが用意せずとも既にこのファイルの中に記されていた。そして見つける、その仮釈放者の名前を。 『フロッグさん、どうやら多人数ロシアンルーレットに紛れ込んでいたのは害虫だけでは無かったみたいですよ。この釈放ゲームの優勝候補、最強最悪の獣が一匹紛れ込んでしまったみたいです』
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