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不自然で歪な居心地の悪い沈黙がこの部屋を包む。
テーブルの縁のボタンを押すという行為、実際にそれはごく僅かな動きで可能かもしれないが、他のプレイヤー5人の視線を掻い潜る必要がある。
更に負けることが許されないこんな状況ではプレイヤーたちの視線も些細な動きすらも見逃さない鋭利なもの、装填者からすればボタンを押すという行為も困難なものかもしれない。
そんな様子を見てベアーは説明を付け加えた。
『装填者に選ばれたプレイヤーはテーブルのボタンを押す以外にも、囚人時計を使い弾を装填することが可能です』
僕は自分の囚人時計に視線を落とす。
『囚人時計には0から9までの数字が割り振られたボタンが付いており、このゲームでは1から7までのボタンを使用し、装填者はテーブルのボタンの代わりに囚人時計のボタンを押すことでも弾の装填場所を決められます』
そうなれば装填者は他のプレイヤーに気付かれずに弾を装填することができる。テーブルのボタンを押すか、囚人時計のボタンを押すか、さすがにその二つの動きまでは全て把握出来ない。
『ただし、一度ボタンを押してしまうとそれ以降の入力は無効です。装填者に選ばれた方は慎重にボタンの入力をお願い致します』
そして再び暫くの沈黙。
やがて片手の端末の画面を確認していたベアーが口を開く。
『装填者の装填が完了致しました』
やはり全く分からなかった。この中の誰が装填者なのか。ボタンを押していたのかなんて。
『それでは順番カードを回収したいと思います』
ベアーはその数字を自分だけが分かるように確認しながら、1枚ずつプレイヤーから順番カードを回収していく。
僕のカードもベアーの手へと返され、ベアーはその結果を端末に入力すると、ゲームの準備段階はこれで全て終了した。
『では皆様、あちらの画面をご覧下さい』
ベアーが指差すところには壁に掛けられた一台の液晶モニター、暗転を映し出していたそれに青白い光が灯り文字と数字で構成された列が一瞬で表示される。
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【リハーサル回】
1.灰島/12
2.中丸/12
3.久崎/12
4.猫田/12
5.楓/12
6.長沼/12
テーブル/0
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