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多人数ロシアンルーレットのルール説明はこれで全てだった。
パーフェクト・フェア・オールドメイドよりも確かに複雑なゲーム、しかしこのゲームにおいて重要なことは至ってシンプルだ。
装填者になった場合、如何にして他のプレイヤーにパス代を支払わせておきながら、最終的に発砲させるか。
そして、装填者では無い場合、如何にして発砲させずに引き金を引くことができるかのその二点。
一番の理想を言えば、それは6人のプレイヤーによるパーフェクトプルの達成。
短いスパンで見れば、パーフェクトプルのボーナスである釈放時間2時間は、装填者からすれば物足りないもの。
何故なら装填者は、4人のプレイヤーにパスをさせ、1人のプレイヤーに発砲させることができたのなら、たった一回で12時間もの釈放時間を稼ぐことが出来てしまう。
しかし、12回あるゲームの2回しか装填者にはなれない。後の10回はディフェンスに徹するわけで、長い目で見れば確実にパーフェクトプルを達成し続けていた方が利口な選択と言える。
でも僕たちはお互いを信じ、協力してパーフェクトプルを達成し続けられるのだろうか…。
装填者になったとき、目先の利益だけに捉われず、ここにいる全員が7発目に弾を装填し続けられるだろうか…。
『では中断してしまっていたリハーサルの続きをお願い致します。一番目の灰島様、パスかプルか、どちらかお選び下さい』
ベアーの言葉によって、再びリボルバーを持つ灰島に全員の視線が向けられる。
リハーサルといっても空気はピアノ線みたいに張り詰めていて、一瞬も油断なんてできない状況だった。
そんな中で灰島は痩せこけた顔に不器用な、でも人の良い落ち着いた笑みを浮かべながら口を開いた。
「皆さん、今回はリハーサルということで、結果はゲームには関係無いらしいので、一つ提案なんですが…この銃が回ってきた順番で自己紹介でもしませんか?」
確かに僕はまだ楓と灰島以外のプレイヤーの名前と顔が一致していない。
それに自己紹介をすることで、僕の記憶に繋がるヒントが見つかる可能性だって少なからずは存在した。
僕はその灰島の提案に賛成で、他のプレイヤーたちからも特に異論は無かった。
そして緊張と緩和が溶けて混じり合う、奇妙な空気に包まれた自己紹介を兼ねたリハーサルが始まった。
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