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「新しくやってきたお二人以外とは先ほど簡単なご挨拶は済ませましたが、私からもう一度」
灰島の丁寧な口調、緊張しているのか少し震えているようにも聞こえる。
「私の名前は灰島エナと申します。この前のババ抜きでは運に救われて勝利しただけなので、どうか皆さんお手柔らかにお願いします」
演技しているようにも聞こえる灰島の言葉、それは僕が人を疑うことを覚えてしまったからだろうか。
「では私は、万が一にでも発砲してしまっても折角のリハーサルが直ぐに終わってつまらないので、ここはパスを選ばさせていただきます」
灰島は引き金を引くこと無く、リボルバーをテーブルの上へと戻した。
それと同時に壁に掛けられた液晶画面に表示される灰島の横の数字が12から10へと減り、テーブルの横の数字は0から2へと増える。
テーブルに灰島のパス代2時間が支払われたということだ。
「どうも…初めまして…」
そう言って次にリボルバーに手を掛けたのは、この6人のプレイヤーの中で恐らく最年少だろうハーフ顏の青年だった。
二番目のプレイヤー、彼が中丸と言うらしい。
「中丸ヨコシカと言います。よろしくお願いします」
中丸はそれだけ言うと、灰島と同じように彼もまたパスを選択した。
テーブルに支払われたパス代はこれで合計4時間。
そしてテーブルの上に戻されたリボルバーの引き金は依然として弾倉の1発目を狙っていた。
「久崎トオルと申します」
僕はそう言ってリボルバーを手に取ってみる。見かけよりもずっしりと重く、その重さがあたかもこれが本物の銃かのような錯覚を与える。いや、もしかしたらこれはゲーム様にある程度改良してあるだけで本物の銃かもしれない。
銃のことなんて何も知らないくせに、記憶なんて何も無いくせに、僕はどうしてかこれが元々は本物の銃だということを感覚的に理解していた。
「皆さん一時間近くお待たせしてすみませんでした」
僕はそう言いながら、手にしたリボルバーを観察してみる。
先ずは一番最初に確かめておきたいところから。
弾倉の辺りをよく見てみる。特に弾倉とリボルバーの本体に隙間がないかを。
しかし、当たり前だがそんな隙間は無く、リボルバーの外側から何発目に弾が装填されているかを確認することは不可能であった。
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