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他にも、このゲームを有利に進める為の銃の特性は無いかと念入りに調べてみたが、フェアを謳っているゲームである以上、そんなものは全く存在しなかった。
そんな僕の様子を見てバッタが笑う。
「久崎君、俺も君が来る前のリハーサルでその銃を色々と調べてみたが、例えば何発目に弾が込められているかのようなことは、残念ながら分からないものだよ」
「確かにそのようですね」
僕は諦めて、そしてパスを選択した。
釈放時間が実際に減るわけでは無いリハーサルとは言え、やはり1発目の引き金を引くことは止めた方がいい。
装填者からすればテーブルのパス代を独占する為にも最終的には誰かに発砲してもらうことが一番であり、弾は弾倉の前半であればあるほど込められている可能性が高くなる。
その中でも一歩目とも言える弾倉の1発目は、最も警戒すべき地雷原。
裸足でその場所の地を踏める根拠も勇気も僕には無かった。
「次は私の番ね」
四番目のプレイヤー、猫田がリボルバーを次に手にする。
「猫田菜々芽(ねこたななめ)、私もパスするわ」
唯一の女性である猫田は簡潔にそう言うとリボルバーを直ぐにテーブルに戻した。
「じゃあ俺の番だ」
五番目の大石楓がリボルバーを手に取った。楓も僕みたいに初めて触るそれを慎重に見回し、何も無いことが分かると簡単な自己紹介を済ませ迷うこと無くパスを選択した。
これで5人分のパス代、つまり10時間の釈放時間がテーブルに支払われたことになる。
そして最後のプレイヤー、バッタと呼ばれていた男がゆっくりとリボルバーを手に取ると、それをそのまま自分のこめかみへと向けた。
「どうも、俺は長沼ケイだ。この収容所に来る前はバッタと呼ばれていてな、そっちの方が慣れている。だから気軽にバッタと呼んでくれ」
バッタは銃口をこめかみに向けながらそう話す。
「しかし、リハーサルとは言え全員がパスを選ぶとは残念だ。実を言うと、俺にはある能力があって見えるんだよ」
バッタは口元を不気味につり上げた。
「俺には見えるんだ。そうこのリボルバーの弾の位置が」
冗談を言うように、でもその言葉は飛びっきりの剥き出しの悪意で満たされていて、彼がそんなことを本気で言っているように僕には聞こえた。
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