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休憩室、その中はせいぜいあの牢獄よりかは人が生活できるレベルと言えるような部屋だった。
依然として剥き出しのコンクリートの箱の中に、木製のベット、その上に引かれたカビ臭いシーツ、元々は白かったそれも今では薄い黄色を帯び、黄ばんだ所々に穴が空いては破けていた。
床には割れた鏡の破片が散らばっている。元々は壁に掛かっていたものだと推測できる。
部屋の隅には小さなテーブル、テーブルの上にはベアーの言っていた通りに簡単な食事と水の入ったペットボトルが何本か。
僕は極度の空腹と、喉の渇きに飢えていたことを思い出し、それへと有り付いた。
お世辞にも美味しいとは言えないが、胃酸すらも吐き出してしまった僕の空腹を埋めるには十分だった。
五分程経過したぐらいだろうか。僕が二本目のペットボトルを開けようとしていたとき、木製の扉が軽快な音を二回立てる。
直後に部屋の外から楓の声。
「久崎さん、入っていいですか?」
断る理由なんて勿論無かったから、僕は直ぐに扉を開けた。
「すみません…部屋にいても落ち着かなくて」
楓はそう言ってベットの上に腰を掛けた。その顔はこれから勝利の為に意気込んでいるようなものでは決して無かった。憂鬱、不安、負けることへの恐怖、それで満たされている。
「久崎さん…バッタは俺の込めた弾の位置を的中させました。俺たちはそんな相手に本当にこのゲームで勝つことができるのでしょうか…」
やはり楓の不安の原因はそれだった。まるで僕らは弾倉。バッタという装填者に見事に不安という種を装填されてしまっていた。
「バッタは能力を持っていると言っていた。弾の位置が分かる能力が…」
楓の頭の中でシリンダーのようにネガティヴな思考が永遠に回り続けている。それを打ち払うために引き金を引くことは難しい。でも僕はバッタが弾の位置をどうやって的中させたか、その方法の見当はついていた。
「楓君これは恐らくですが、能力なんて無くてもバッタさんのあの状況なら、弾が1発目に装填されていることを言い当てることは可能だったはずです」
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