2.号砲

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ー前半戦・第1回ー 僕のランプは無点灯、楓のことを見ると彼も小さく首を横に振った。つまり第1回目の装填者の権利を僕たちは得られなかった。 前半戦6回の何処かで必ず装填者になれるとしても、第1回目で僕かあるいは楓が装填者になることが一番望ましい展開だった。 それは「流れ」を作るため。この6人でパーフェクトプルを達成し続ける為の。 このゲームにおいて一番厄介な存在は前半戦終了時と、後半戦終了時に最も釈放時間を稼いでいたプレイヤーにそれぞれ与えられる12時間のボーナスであった。 いや、これはボーナスなんて代物では無い。アニマルが意図的に用意したパーフェクトプルへの抑止力。 他のプレイヤーよりも釈放時間を1時間でも多く稼けば、この12時間を独り占めできると手招きする裏切りへの誘惑。 つまり、誰か一人でも裏切り、プレイヤーたちの釈放時間にバラつきが出来てしまった時点でパーフェクトプルを達成することは限りなく不可能になってしまうのだ。 その為にも第1回目の装填者にはなりなかった。だが結果は僕でも楓も無い。他の4人の誰か。 「すみません…一ついいですか?」 プレイヤーたちの疑心暗鬼、そんな中で慎重に言葉を選びながら恐る恐ると声を上げたのは痩せこけた骸骨のような男の灰島だった。 全員の視線が一瞬で灰島の元へと集中する。 「私は思うのです。このゲームは皆さんで騙し合うより、ここは協力してパーフェクトプルを達成し続けることが利口な選択だと」 「そんなこと分かってるわ」 灰島の言葉に猫田が噛み付く。灰島はそれに怯みながらも話しを続ける。 「パーフェクトプルを達成することは容易なことではありません。皆さんで信頼し合わないといけないので…だからどうか今回は私を信じてください」 「信じるってどういうことですか?」 僕が聞くと灰島は一呼吸置いて、そして第1回目の装填者が自分であることを明かした。 「どうやら私が今回の装填者です。そして私は必ず7発目に装填します。だから、どうか皆さん引き金を引いて欲しいのです。絶対に発砲なんかさせません。私はパーフェクトプルを達成したいのです」 灰島の言葉に全員が黙り込む。この申し出は僕にとっても有り難いもの。しかし、手放しで灰島の提案を受け入れることなんて誰も出来やしない。
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