48人が本棚に入れています
本棚に追加
理屈では分かっている。引き金を全員で引くことが最善だなんてことは。しかし付きまとうのは裏切りへの不安。
どれだけ言葉を並べようが、それは絶対に払拭出来ない根深いもの。
沈黙、というよりかは思考。それぞれが裏切りへの恐怖と、パーフェクトプルをそれまでしても達成することの有意義性を天秤に計っている。
誰も返答を返せない様子を見て、灰島は静かに言葉を続けた。
「簡単に私のことを信じてもらえるとは思っていません。ではこういうのはどうでしょうか?」
灰島はそう言ってある一つの提案をし始めた。
「この次に我々には順番を決めるカードが配られ、この順番カードはゲームホストであるベアーさんに返すときに何番のカードか確認されています。なら逆に考えればベアーさんに返すまでは我々で好き自由にカードの交換をし、順番を入れ替えることが可能なはずです」
「なるほど…」
僕は灰島の考えに感心した。確かにそうかもしれない。
カードの返却時に番号は確認されている、それまでの間にカードを交換すれば、リボルバーが回る順番をプレイヤー間で任意に入れ替えることは可能だ。
ベアーのことを見る。ベアーは依然として部屋の隅で姿勢良く立っているだけ。それがルールに反しているとは言わなかった。
「しかし灰島君、順番を変えたところで一体何の意味がある?」
バッタは退屈そうにそう聞き返す。
「この後で配られる順番カード、もし私のものと交換したい方がいたら教えてください。私のカードと交換します。そして私は交換したカードを見ずに弾を装填します」
灰島の目的を僕はようやく理解した。
もし誰かが灰島と順番カードの交換を申し出て、灰島がその交換し終えたカードを見ることが無ければ、灰島は自分の順番が何番か分からないまま弾を装填することになる。
「もし私が皆さんを裏切るつもりで1発目に弾を込めたとしても、1番目のカードを引いた方が私とカードの交換をしていれば、私は引き金を引けずに裏切りが発覚します」
装填者が自分が何番か分からない状況で弾を装填する。これはもしかしたら、裏切りを防ぐ言わばセーフティなのかもしれない。
「私はこのゲームで裏切り合う展開だけは避けたいです。こんな方法しか取れませんが、第1回目、この回は絶対にパーフェクトプルを達成する必要があるはずです。今後それを続ける為に…絶対です」
最初のコメントを投稿しよう!