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楓はリボルバーをこめかみに向ける。
きっと楓も不安を完全に払拭できたわけではないだろう。
でも、7発目に弾を込めたなんて安易な言葉だけでなく、装填者である灰島は自分の順番を知らなかったという事実がある以上、引き金を引く可能性がある6発目まではどこにも弾を込められなかったというのは正論であり、不安で押しつぶされそうだった楓の顔も、今はいくらかましになっていた。
リボルバーを持つにも力が入っている。
そして、楓の指がゆっくりと引き金にかかる。男にしては細長い人差し指がしっかりと引き金をとらえる。
僕は灰島の顔を横目で確認した。彼は無表情で楓の様子をうかがっていた。その顔から思考は読み取れない。でも目の下に絵の具で塗られたような黒いクマが彼の眼つきを異様に悪く見せていた。
本当に楓はここで引き金を引いていいのか?
僕の頭に疑問が浮かび上がる。
灰島は自分の順番を知らないままで弾を装填した。でもそれだから安心と言えるのだろうか。前回のゲームのせいか僕は人を疑う癖を身に着けてしまっていた。
良いことなのか悪いことなのか、でも僕はパーフェクトプルを達成するためにわざわざ絶対有利である装填者であることを公表してくれた灰島のことを信じたかった。
「じゃあ俺も引くよ」
そう言って楓は力強くその引き金を引いた。
『パアッーン!!』
爆発するような轟音が部屋に響く。楓の持つリボルバーの銃口から煙がゆらゆらと天井へと抜けていく。
まるでそれはこれから行われる最悪のゲームの始まりを告げる号砲であった。
「くはははははっはっ!!」
何が起きたのか理解の遅れた参加者たちの中で一人、腹を抱えて笑う男がいた。細い顔、眼球を剥きだすようにがっと見開きながら、楓のことを笑っていた。
「灰島さん・・・あなた」
僕の言葉は力なく抜けていく。何も変わっていない。剥き出しにされた人の欲に落胆しているわけではなかった。また意図も簡単に騙される自分に落胆していた。
「楓さんごちそうさまです。あなたのお時間頂戴いたします」
灰島はそう言うと、長い舌で自分の唇をベロリと舐め挙げた。
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