3.視覚

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第2回目のゲームは、第1回目と比べると何事もなく淡々と進んでいった。 それは決して良い意味ではなく、膨張した疑心感が六人の会話を抹殺し、選ばれた装填者が名乗りをあげることもなく、沈黙で僕達の順番は消化作業のように決められていく。 勿論順番カードの交換を申し出る者はいるはずもなかった。 装填者以外、誰も誰が装填者か分からない。自分以外、誰も他の人間の順番を知らない。 そして装填者は息をひっそりと潜め、テーブルのボタンか、その腕に巻きつけた時計を使い、リボルバーの中に人一人の人生を破壊する弾丸を詰め終えた。 『それでは装填が完了しましたので、皆様の順番カードを回収させていただきます』 カードを回収し終えたベアーは第2回目の順番を発表する。 【前半戦・第2回】 1番目:バッタ/12 2番目:久崎/12 3番目:猫田/12 4番目:楓/8 5番目:中丸/12 6番目:灰島/16 リボルバーはバッタへと手渡される。 バッタはそれは玩具のように嬉しそうに両手の中で遊ばせていた。 「さてさて順番は俺から。重い空気が流れているが、もっと気楽にいきましょうよ。これはゲーム、楽しい楽しいゲームなんだ」 バッタは1番目にも関わらずその余裕な姿勢を崩すことはなかった。焦りなんて欠片も無い。 「そしてゲームはゲームらしく始まった。大切なのはこの疑心感、このスリルですよ。まさか灰島君、あなたが早々に嘘をつくとは思ってなかったんだがな」 バッタは手の中のリボルバーを見ながら続ける。 「でも残念だが、こうなってしまうと皆さんは俺に勝つことはできない。何故なら俺には弾の位置が見えるからだ」 バッタの口から笑い声が漏れる。維持の汚い不清潔な声。 「じゃあその引き金、引けるものなら引いてみなさいよ。どうせ一発目に弾が入っているとかなんとか言ってパスでもする気でしょ」 猫田の分かりやすい挑発、でもバッタは首を横に振る。 「確かに一発目に弾が込められている可能性は相当に高い。でも猫田君、安心してください。俺はパスなんかしない。俺には弾の位置がはっきりと見える。そして弾は一発目には込められていないからな」 バッタはリボルバーを自分のこめかみに向ける。そして躊躇うことなくその引き金を引いた。 『カチッ!』 ハンマーは空を叩きつける。バッタはリボルバーをこめかみに向けたまま歪んだ笑みを浮かべていた。
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