3.視覚

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普通に考えれば答えは一つしかない。 今回の装填者がバッタだったというだけの話し。 ならば弾の位置なんて分かるに決まっていて、それ以外の可能性を考えるほうが馬鹿らしい。ここにいるプレイヤーたちほぼ全員がその可能性へと辿り着く。 いや、その可能性を信じたかった。 何故ならもし本当にバッタの言う通りに、装填者でもないのに弾の位置が分かるようなことがあれば、そんなプレイヤーに勝つ事なんて不可能に近いからだ。 「さあて俺の見えた通り、一発目はセーフ。お次は久崎君、あなたの番だ。幸運を祈るよ」 バッタから手渡さられるリボルバー。六角形のテーブルはさほど大きくはなく、プレイヤー間でリボルバーを直接手渡す距離にあった。 「見え透いた手ね」 猫田は鼻を鳴らす。 「なんだかんだ言ってあんたもただの小悪党のようね。弾が見えるとか言って所詮は私達を脅したいだけでしょ。でもそんなもの無意味よ」 「無意味?あぁなるほど、猫田君、君は今回の装填者が俺だと思っているのかな」 「それ以外考えられないし、そう考えるのが普通じゃない?」 バッタは肩を小さく揺らす。息を殺して笑っていた。彼の目は本気で僕達のことを見下していた。 「まぁそう思えばいい。でもこの中でただ一人、"本物"の装填者だけはそうは思っていないんしゃないかな」 バッタがゆっくりとプレイヤーのことを見回していく。 彼の言葉はただのはったりなのか、それとも本当に弾の位置が見えていたのか。 その真意は分からない。でも僕は彼が嘘をついているようには思えなかった。それは直感。記憶なんて無い曖昧な存在の曖昧な確信。でも僕はバッタが装填者でなく、そして弾の位置を読んでいたとそう思えて仕方が無かった。 「装填者が名乗りあげなければその真実は証明されない。だがこれから嫌というほど分かるだろう、気づくだろう、思い知るだろう。俺は絶対に発砲する事はない。そして君たちは俺に絶対に勝つことはできないと」 俺はバッタから手渡されたリボルバーを静かに眺めていた。思考が犬村と戦ったときのように急速に回転し始める。 バッタの絶対的な自信、その自信の正体を一刻も早く暴かなければこのゲームに勝つことはできない。装填者でなくとも弾の位置を読む術、その方法を暴かなければ。
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