プロローグ

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真っ暗闇の中。 悲しみに暮れたような声が、辺りを満たしていた。 叫ぶように…。 苦しんでいるように…。 ああ…、またこの夢か…。 ゆっくりと目蓋を上げて光を受け入れる。 と、視界一杯に泣き顔が映し出された。 『……っせる…ま…』 泣きすぎてイケメンが酷い事になってますよ。 そんな軽口を言う事は出来ず、代わりに口からは鮮血が零れ落ちた。 『…っ!喋るなっ!今医者を呼ぶからな…。な…っ?』 『あ…るば…とさま…っ』 『セルマ…っ』 抱き締められている感覚。 愛しいこの人が、僕の身体を強く引き寄せる。 そして、暖かくも冷たい雫が僕の頬に落ちて流れた。 『っご…めんな…!俺、お前を守るって…っ』 『い…んですよ…?泣かないで下さい…』 最期の気力を振り絞り、恋人の頭をよしよしと撫でる。 出来るだけ優しく優しく…。 『アルバート様…ぼ、くは…』  『貴方を愛していました』
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