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呼び掛けた声色が愉快げに弾み、それは凍り付いた空気の中では狂ったように感取したかもしれない。それはそうだ、結構なことである。
バスティではなく、俺にとっては今のところ無害であったココット、しかも女性に容赦のかけらもない一撃を加えたことは衝撃以外の何物でもなかった筈だ。
老若男女、全て平等。乳飲み子であろうと老婆であろうと関係ない。罪悪感も嫌悪感も悲壮感すら存在せず、ただ命を嬲っていく俺は確かに狂人だろう。
自覚してる、勿論な。制限解除しても直ぐに誰も動きが無かったのはいきなりやりすぎたかなーとか、ほんの少しだけ思ったけど。
さーて、どうしようかと思考を巡らす前に、背後にいたユーストが呆然と呟いた。
「…………ココット、さ、ま……が」
恐らく無意識に漏れたのは察した。誰に向けるでも無い独り言。俺は間髪入れず振り向くことなく発話する。
「冷静になれよユースト。まだ殺してないし、これからだからな」
「あ……、あっ、あぁ、うん。そうだな。分かってるさ」
最後にはしっかりと頷きを返してくれたので良いのだが、裏腹に浮かべていた笑みは掻き消える
……ココット様、ねぇ?
これが血の繋がった実の親に対しての呼び名か。気持ち悪い、が率直な感想だ。
次男であるカルサも同様か?なんて疑問が過ぎり彼へ目を遣ると同時だった。
「……──」
掠れた聞き覚えのない、ごく小さな声が張り詰めた空気の中で耳に付く。
ありふれたような台詞だった。──いやだ、と。
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