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きっと、ルヴィは何も知らない。いや、知ろうともしない。
傲慢に振る舞い、私服を肥やし、平民を蔑む彼を嫌悪すれど、そこから踏み込むことは無い。
彼にとってユーストは、ただの″最低な貴族″。
だから、ユーストがどんな嘆願をして、苦悩を抱え、ルヴィを目の敵にして、禁忌を犯したかを。
「叫ぶな、五月蝿い」
──理解をしようともしないまま、刀を構えた青年は脇腹に一閃した。
パキン、とユーストが付けている御守りブローチが音を立てて割れ、ダメージを肩代わりするものが無くなる。
目を見開くユースト。視線は粉々になったブローチに向けられ、懐に潜り込んでいるルヴィに気付かない。
まだ禁忌の効果が不十分な内に叩き込もうとする魂胆が手に取るように分かった。
嫌だ。
そんな悲痛な声が頭の中に聞こえた瞬間、ユーストの纏う魔力が再び急激に上昇し、部屋中に重圧力が襲った。
制御できていない魔力が渦のように唸る。
特にユーストの周りは飲み込まれそうな程高密度な魔力が蠢いた為にルヴィが舌打ちをしながら飛び退き、担任は苦しげに顔を歪める。
俺は余裕で耐えられるが、まぁ普通の生徒は耐えられる訳もないのでとりあえず膝をつく。
……目が合った。ユーストと。
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