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ジリジリと焼けるような痛みが断続的に続いているが、無視して無言のまま続きを促す。
「……その、後。……禁忌を犯した……つみ、として。僕は……、ッ……、……しょ、処刑……され……ることに……ッ!」
″処刑″。
絞り出すように、小さく掠れた声で発した言葉。
遂にポロポロと涙を流し始めたユーストを、ただ静かに眺める。
クラスメイトが今の彼を見たら驚くことだろう。普段の傲慢な態度からの豹変ぶりによって。
腰掛けていたベッドから立ち上がり、俺は部屋の窓際に立つ。
真夜中に浮かぶ欠けた月を一瞥し、口を開く。
「……産まれた時から英才教育を受け、どんな貴族の子よりも両親から厳しく接せられていた。常に言われていたのは″1番じゃないと私達の子ではない″。努力に努力を重ね、その言葉通り1番であり続けた青年の前に突如現れる別の青年。苦労もせず座学も実技も飄々と貴族の青年を抜かしていく。貴族でもない青年が。貴族の青年は更に努力した」
窓に映るユーストと目が合う。勢いよく顔を上げた彼の表情は予想通りだった。
「それでも勝てなかった。それを知った彼の両親は激怒する。貴族の青年は焦った。狂うほどに焦った。それ故に犯してしまった、禁忌を」
体の向きを変え、彼へと向き直る。貴族の青年──ユーストは、きつく唇を噛み締めていた。
「気づいたらギルドの地下牢だった。顛末を聞いた後に告げられたのは処刑。告げた者は言った、これはお前の両親からの要望だ、と」
月が雲に覆われたのか、部屋が途端に暗くなる。ハルなら兎も角、【ゼロ】なので問題なくユーストの様子は窺える。
絶望へと、導く。
「完全に捨てられたんだな、家名の無いユーストさん?」
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