暴動

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 ……瞬間、咳が切れたように声を上げた。 「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」  慟哭ぶりは凄まじく、哭声は鼓膜を強く刺激し、感受性豊かな者がこの場にいれば憐憫するかもしれない。  残念ながら、目の前で幼い子供を惨殺し母親の咽び泣く様を嘲笑し後を追わせるような男しかいない訳だが。  どうやら俺のいるこの部屋は高度な<<防音結界>>が張られているらしく、人が近付く気配も無い。病人がいる部屋に防音かよと思いもするが、外の雑音を遮り静寂の空間を保つにはこの方法しか無かったんだろう。  結界の外側からの音だけを遮断、内側からの音だけを遮断、というのは出来ないし。けれど文句は特に無い。  よって俺は誰にも邪魔をされず、ユーストの絶望に堕ちた顔を眺めることができた。  辛いよな。悲しいよな。簡単な言葉じゃ言い表せない程の激情に呑み込まれているんだよな?これまで生きてきた時間全てを否定されたんだもんな。あぁ、それはキツイなぁ。  嘆く声も枯れだした頃、意味を成す言葉が口から溢れ出す。 「僕は、頑張ったんだ……!認められたく、て、愛されたくて、頑張ったんだ……!周りもそれ、を、望んでた……!」 「誰かと遊びたくても、我慢した!幸せで笑いたくても、無理だった!僕がセアルダ家の、長男だから……!」 「嫌でも言えなかった、両親が絶対だった!でも1番になっても、当たり前で……!頑張ったなって、それだけで……それだけで、良かったのに……!」 「誰も僕をユーストだと、見ない!見ない、見ない!どいつも、こいつも、僕をセアルダ家の長男としか、見ないんだよ!!」 「…………だから、ガルナーがユーストと呼んでくれた時は、嬉しかった、のに」
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