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「ユースト・セアルダ。″俺″が誰だか分かるか?」
脈絡も突拍子も無い、簡単な問い。クラスメイトである彼に向けて投げかけるにしては不思議だろうが、ユーストは質問の意図を読み取り、思考を巡らせたようだった。
「……。学園で見てきた、ハル・ガルナー、とは。まるで雰囲気が違う……。でも、確かに本人だ…………空似、か?いや……」
最終的には首を横に振った。まぁ分からなくて普通だと思うし、当ててほしい訳でもないので特に文句も言わず、俺は口角をゆっくりと上げ、愉快げな声色で答えを口にする。
「では、改めまして。俺は【ゼロ】と呼ばれている者だ。以後お見知り置きを」
──その時の、ユーストの反応ぶりは凄まじかった。憔悴しているとは思えない程の驚愕と動揺を見せる姿はとても面白かった、とだけ言おう。
口元を押さえ、ぷるぷると肩を震わせる俺を見てハッとしたように固まり、顔を赤くして萎縮した。
「す、すまない、取り乱した」
「謝んなくてもいいぞ、急な暴露だしな」
さて、ここからが本題である。
「お前、俺に依頼する気はあるか?」
我ながら唐突だが、時間が無いので仕方ない。やろうと思えば時間を止めることもできるけど、と思いながらもピシリと固まったユーストに苦笑する。
「……死を待つだけの僕が、ゼロに?」
首肯し、微かに光が宿った瞳を見据えて、俺は告げた。
「セアルダ家全員、消してやるよ。そして、お前を生かしてやる」
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