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……こればっかりは、運が無かったに尽きるな。
『いい筋だ。これなら心配なさそうだな、そのイメージでよろしく』
<<念話>>も魔法の1つなので、このまま進めば魔力に反応して罠が発動するとも限らない。セアルダ家の屋敷全体に対し俺の魔法をかけつつ話し掛ければ、驚いた様子を見せその後見事に頬が緩んだ。
『こ、この位ならな!やってみるさ』
頭に響く嬉しげな声に俺も釣られて僅かに笑みが零れる。簡易な褒め言葉にすらこの調子なのが哀れみを感じる面もあるが、とりあえずは元気が出てきて何よりと言ったところか。
『じゃあまず質問するぞ。ここはどちらかというと魔法陣による防犯が主か?』
お金がどれだけ飛んだか、ちょっとだけ気になったのは余談。
『あ、あぁ。この屋敷全体だと転移無効化、後は正規の手順で予め魔法陣に魔力を流した人物以外が範囲に入ると爆発したり毒になるその他諸々の効果があるのがあちこちに。おかげで召使いの数も最小限、護衛も当主とその家族にそれぞれ1人だけだ』
成る程と思うと同時、俺は足を動かし部屋の出口まで進み、躊躇なくドアノブに手をかける。
『さ、行こうぜ』
『い……!いや、今の話聞いてたのか!?ここは罠だらけで……』
『聞いてた勿論な。もう全部無効化した。護衛の位置も召使いの位置も、標的のセアルダ家一族の位置も把握してる。……思ったよりも早く終わりそうだな』
最後のは独り言に近かったが、ユーストには衝撃的だったらしい。この短い間で彼は何回驚愕するんだ。俺は淡々と告げる。
『数分でもう忘れたか?俺は【ゼロ】だって』
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