6292人が本棚に入れています
本棚に追加
ユースト
さて、ここで依頼内容について整理しよう。
殺しの標的はセアルダ家の全員。依頼主の希望により雇われた者は殺害不可。対象人数は4人。
現当主の《バスティ・セアルダ》。
バスティの妻である《ココット・セアルダ》。
次男の《カルサ・セアルダ》。
バスティの父で前当主の《ダル・セアルダ》。
……なお、今回殺し方に指定有り。
「1つだけ確認していいか?」
ダンスホール会場の繋がる扉の前で立ち止まり、後ろにいたユーストへ振り向かずに声を投げ掛ける。
何だ?、と了承の答えが返ってきたところで、俺は少し間を空けて再び口を開いた。
「お前、本当に耐えられる自信があるのか?」
──殺しの現場を生で見ることに。
彼が即答することはなく、沈黙が続く。歯が強く噛み締められる音が耳に届いた。
より残酷に、無慈悲に。ユーストが指定した。ただ殺すのではなく、より苦しませる方を望んだ。
更に現場をこの目で見届けたいとも。
その申し出は過去にも何回か受けたことはあるが、大抵は己と同じ人間が圧倒的な力でその命を散らす様を見て、狂う。
泣くにしろ、嘔吐するにしろ、昏倒するにしろ、笑うにしろ、更に遺体を痛めつけるにしろ。
記憶が脳裏に、心に刻まれる。永遠に。
最初のコメントを投稿しよう!