6292人が本棚に入れています
本棚に追加
明らかに全員″覚えの無い者″がする反応ではない。カルサだけは未知の可能性が僅かにあったが、この瞬間に消滅する。
「次。処刑を最初に発案したのは誰だ?」
じわりと睨め付け、逸らすことを禁圧するように敢えて殺気を乗せた。個人的には序の口とも呼べる軽さではあるものの、ユーストの怒気と混じり合い、弱った心と動けない身体全体に浴びせられた少年は限界だったのかもしれない。
「あ、ぅう、たすけて、たすけて、たすけて、はなすから、はなすからおねがいしますどうか」
ユーストは弟の態度が大層気に入らないらしく怒気を更に跳ね上げていたが、話してくれるのであればそれでいいと俺は沈黙を貫く。
「黙らんか!カルサ!」
「ひぃ!?」
……それを遮られたのは、あまり気分は良くないぞ、ダル・セアルダ。
「お前こそ黙れよ。可愛い孫が今話そうとしてるだろ?聞いてやれよ、なぁ?」
心中を渦巻く苛立ちを放ち、流れを遮った老人に向けて嗤う。恐怖を押し切って情報を与えまいと声を出した度胸は認めてやるが、無謀にも程がある。
「アイツの言葉は無視しろ、カルサ。僕を、処刑しろと。命令したのは……っ、誰だ!誰なんだ!?」
今度はユーストが問い詰める。弟に近づき屈み、胸倉を掴んで引き上げる。ダルが止めろと叫ぶ。バスティがカルサの名を呼ぶ。カルサが震えながら口を開いた。
かあさん、と。
全員の動きが時が硬直したようにピタリと止まった。そのままユーストが呆然と手を離し、カルサが再び地面を転がる。縋るような瞳で俺を映していたが無視して足を動かす。向かう先はダルである。
「庇ったか?あの女を」
「……き、さまっ……!!」
「血の繋がり自体は無いのに、その心は尊く美しいと世間は言うんだろうな、きっと。まぁどうでもいいか。ココット・セアルダは1番惨たらしく殺さないとなー」
「……!!……絶対に、絶対に貴様らを許さんぞ、屑が逃げたことを知ったギルドの連中が痕跡を辿ってもうすぐここへやってくるだろう、その時が貴様らの」
瞬間、肉が焦げるような音がする。
俺の掌が彼の喉を掴み、熱で焼いたからだ。
「……喚いたら同じようにって、俺言ったよな?」
大量の汗を流しながら焦点が合わなくなった目、激痛に歪む醜い表情を視界全体に映しながら、俺は小さく呟いた。
最初のコメントを投稿しよう!