ユースト

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 喉が焼き千切れるよりショック死に至るその寸前で雑に手を離す。見るに耐えない悲惨な状態となっているダルからは焼け焦げた異臭が放たれ鼻腔を刺激するが、慣れたもので気分を害すこともなかった。  放っておいても間も無く絶命するが、これでは″まだ足りない″ので無詠唱で回復魔法を掛ける。完全には回復させずに半端に留め、致命傷程度となる。 「ったく、この状況でもよく回る口だよな」  横で思い切り嘔吐するバスティ。  嘔吐自体はしてないものの、気絶し下半身が濡れているということは察しな状態のカルサ。  そして──口を手で覆い真っ青な顔でこちらを見つめるユースト。  順に視線で様子を捉えながら同時に遠くで気絶しているココットを<<強制転移>>でダルの横に移動させる。  傷は異なるとはいえ喉を潰された同士が横に並んでいるのは中々痛快な光景だと思うけど、共感してくれる奴いるんだろうか。……いないか多分。 「さーてユースト、これから本格的に遊んだ後殺っていくからな。どうぞ、お楽しみに」  向けている表情に微笑みを乗せる。目を見開き、口を塞いでいた右手を下ろし左手で作られた握り拳を包む。震えている体を抑えるような行動だった。  込み上げたのだろう唾を飲み込み、そしてゆっくりと口を開いた。 「お願いします」 「了解しました、依頼主さま」  ……さすがに逃げないと言い切っていただけのことはある。目を逸らさずに、真摯に、切実に、悲憤の情を瞳に込めて願ったユーストに俺は満足げに返事をする。 「……ま、さか……きさま、は、あの、殺し屋の……!」  不意に耳に届いたバスティの声は、俺達の会話から察したのだろう、明らかに驚愕と恐怖と入り混じっていた。唯一現在意識のある標的だが、よく会話聞こえてたなと微妙な感心を抱きつつ向きを変える。 「あぁ、名乗ってなかったっけ?まぁ別にいいだろ。どうせお前今から死ぬし」
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