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乗せている感情の中にユーストへの気持ちなど欠片も入っていないと、直ぐに気付いた。
先程彼が嘆くように叫んだ内容通りだ。彼女はただ自身の幸せを失いたくない為に、謝罪を意味する単語を並べただけ。
ユーストは、愛されていない。愛されていなかった。それが答えで、現実だ。
「……これが、目的だったんだな」
辛うじて生きている境目で漸く動きを止め、顔を俯けたまま言葉を発したユースト。問いではなく断定的に近い言葉尻なのがまた、彼の中で答えが決まっているのと同義だ。
無言を貫いた俺に彼は小さく笑う。そうか、と1人頷き、そのまま掌を己の正面へ向ける。
「紅業花」
現れた魔武器を慌てることなく掴んだユーストは、踵を返して倒れているダルへ足を進める。ゆっくりと構えられた槍の穂には鮮やかな赤い炎が宿った。
そして。
「──死ね」
両手で柄を掴み、高く振り上げて……真っ直ぐ、腹へ魔武器を突き刺した。
炎が全身を包み込む。死の直前にいたダルだったが今まさに、命の灯火が消えた。死んだ。悲鳴も何もなく、されるがままに死んだ。魂の消えた肉塊は魔武器の炎で焼かれていく。
それでもユーストは手を止めない。振り上げて、突き刺して。繰り返して繰り返して。何度か繰り返した後、頭だったと辛うじて認知できる物体に足を乗せて、踏み潰した。
……炎、熱くないのか?とか関係ないことが一瞬過ぎった俺だった。まぁ己の魔武器で生み出された炎だからだろうけど。
何はともあれ、まずは1人目だな。ダル・セアルダ死亡っと。
ふらふらと体を左右に揺らしたユーストは、未だに顔を上げぬまま不安定な足取りで今度はバスティに近づく。
まともに言語を使えなくなり、意味を持たない呻き声のような音を発する男。カルサの腕は既に喰い終えたらしく周りには細かく砕けた骨が散らばっている。
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