6293人が本棚に入れています
本棚に追加
まさしく"何を言われたのか分からない"という表現ができるような、口を小さく開け呆けた表情を浮かべるココットに対し、俺はにこりとわざとらしい笑顔を見せて分かりやすく説明する。
「お前が指を自分で切り落とすことができたら、カルサが痛みを感じにくくしてやる。本数が増えるだけ効果は強くなり、10本全部切り落とせたなら完全に痛みを感じないままカルサは死ねる。どうだ?」
要するに、カルサが楽に死ねるようにお前は自ら指を切り落とせるか──ということだ。
掴んでいた髪を離す。顔面蒼白のまま彼女の視線が四方八方に彷徨い、最後には自分の両の手のひらをじっと見つめた。
「ゆび……指?指を……切る?」
その間に、異空間からハサミを取り出してココットの側へ投げる。ちなみに切れ味はそれ程よくない。
「ほら、さっさと拾って切れば?箱がアイツを押し潰すには迷う時間は無いぞ」
言いながら上を見やると、まもなく身体を圧迫し始めるであろうところまできている。ゴンゴンと箱の内側から拳を叩きつけている様からは必死さが窺える。
ココットが震えながらハサミを手に取った。
「おー。頑張れ頑張れその調子」
右手でハサミを開き、左手の人差し指を間に挟ませた。
徐々に刃の間隔は狭まっていく。
刃が指に当たる。そして……彼女は震えたまま、ハサミの動きを止めた。
「どうした?まだ切れてないけど?」
まだ1本も。
「ほらほら、そこまでいったら後は思い切り閉じるだけだって。一回じゃ断つまでは厳しいかもだけど、勢いだよこういうのは」
この場にそぐわない明るい声で先を促す。自分で言ってて学園のハル・ガルナーぽいなと思った。言ってることはまったくハルらしくないけど。
なんなら手を叩いて催促してみるか?……いや、さすがに止めとこう。面倒臭い。
黙って様子を見つめる。ハサミに動きはない。この間にも頭上から悲痛な叫びと抵抗音が響き、ココットにとてつもない焦燥感を与えていく。
「………………むりよ……」
そう声が漏れた瞬間、絶叫が響き渡った。
最初のコメントを投稿しよう!