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ハァ、と溜め息を零しながら頭を無造作に掻く。
元々寝癖が酷い髪型だったのが、この所作で余計に酷さが増した気がする。
ピコンと前に出来た大きな寝癖を摘まみ、俺は隣に並ぶルヴィに目配せをした。
「……何だ?」
「お前が声を掛けてみろ。一発で元気になるから」
「は?何で俺なんだ?」
「……。……いいから」
この鈍感が!と思わず口から出そうになったが、無理矢理抑えた俺を自画自賛したい。
口角を痙攣させながら促す俺を怪訝げに見つめる瞳を無視したことで、彼の雰囲気が若干冷たくなる。
あー、もしかして地雷踏んだか……。
内心で着々と成されていく鬱が何気に深くなったのは露知らず、ルヴィはきちんとライラに声を掛けていた。
──丁度、ここで授業の開始を報せる鐘が鳴り響く。
お陰で俺にはルヴィの甘い囁きを耳に捉えることは不可能だったが、ライラが急に立ち上がり桃色を発した時点で成功したなと確信を得ましたね。はい。
……けど、さ。
お前ら、鐘鳴ったことに気付いてほしいんだが。
聞こえてなかったのか?……でも、後ろで出席簿を構えた我らの先生がいるのが見えないのかねー。
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