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すらりとした細身で片刃の物体は、どこからどう見ても魔鉱石には見えない。
「……あれは、魔武器だね。エル君もう終わったんだ……」
あー、やっぱりサランにも魔武器に見えるんだな。
くそー、惜しいことをした……。
顔にこそは出さないが、内心で悔しさに悶えていると、隣でわなわなと震え出すライラの姿に気付いた。
「どした?ライ……!?」
「──エルの寝顔!!ユウナ、ずるいです!!」
俺の言葉は最後まで紡がれることは無かった。
急に叫び出したライラは、ルヴィ目掛けて突進していく。
「…………ルヴィの寝顔が珍しいのは解るけど、魔武器制作そっちのけ?」
思わず口元が引き攣る。……何?貴族がどうたら言ってたけど、ルヴィの前で吹き飛ぶのか?
「……で。サランはルヴィの寝顔、見に行かねぇの?」
考えても解らないし、何より面倒な為、女の行動力に対しては思考を遮断する。
ただ、ルヴィが好きな筈のサランが俺の隣にいるのは些か疑問だった。
彼女は一瞬ぽかんとした表情を浮かべるものの、直ぐに薄く微笑む。
「んー。私的には、今は魔武器制作に集中したいんだよね……」
この返答には、俺も驚かされる。
優先順位が予想外。
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