6276人が本棚に入れています
本棚に追加
/168ページ
謝れよ──死ぬぞ?
漏れそうな殺気も、放ちそうになった言葉も、俺は理性で抑え込む。
これだけで我を忘れる程、短気でも馬鹿でもない。
ただ、纏う雰囲気が一瞬だけ変わったことに気付いたルヴィが、目付きを変えて俺を見つめる。
驚愕と困惑がひしひしと伝わるなぁ。
「……どした?ルヴィ」
立ち上がり、首を傾げる。
同様にユウナも、そしてユウナに続いて集合したライラとサランも、ルヴィの様子に不思議そうな顔をする。
「何か俺の顔に付いてるか?……ハッ!?まさか俺に惚れ……」
「んな訳ねぇだろ」
「ですよねー」
ふざけてカマをかけてみたが、凍てつくような視線を向けられて苦笑しつつ黙る。
「何でもない。……ユウナの魔武器は弓らしいぞ」
そのままルヴィは視線を俺から外すと、3人の魔武器談義に軌道修正した。
唇が「気のせいか」と動いたのを見逃さなかったが、俺にとっては好都合。
気を付けねぇとな……。
「……弓か。キレーな弓だな!」
「ハルにしては解るじゃない。″霧雨″って名の魔武器よ。少し大きいけど、重さは対したことないし気に入ったわ!」
俺も然り気無く談義に割り込み、ユウナの魔武器に対し率直な感想を述べると、彼女は胸を張って誇らしげにした。
持ち手は青の半透明で、よく見れば薔薇の模様が繊細に刻まれており、両先端には小さな透明の石が埋め込まれている。
弦は銀色で、弦を形作る糸の内1本はどうやら金色みたいだ。
売れば高そうだな、とちょっとずれた思考を抱いたのは余談。
最初のコメントを投稿しよう!