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鼻を鳴らしながら弓を担ぐユウナの姿は中々様になっており、近くにいる男子の視線を釘付けにしている。
「次は私ですよ!えへへー見てください、鞭でした!」
ルヴィは″霧雨″を見てへぇ、なんて声を漏らしたが、隣にいたライラはユウナを見て見惚れたと勘違いしたのか、ムッとした表情で1歩前に出た。
明らかに嫉妬だな、うん。
しかしその時に放った強烈な一言が、俺達を様々な反応にさせる。
「は?」
「嘘?」
「え?」
「げぇっ!」
ルヴィは眉を顰め、ユウナは疑うような目付きに変わり、サランは口を開け呆然とし、俺に関してはあからさまに嫌な顔と声をして後退った。
ライラの魔武器、鞭。
鞭、イコール俺の気絶理由増加。
絶対アレ俺に使うよ?……あーいや、俺普段″絶対″ていう言葉は滅多に言わないけど言うよ?
「ハル?なーんでそんな嫌そうに離れたんですか?ほーら、ちゃんと見てくださいよ」
明らかに裏がある言葉と共に、背中に回されていた魔武器が露になる。
……まごうことなき、鞭でした。
他3名も表情が引き攣っているのが、視界の端で捉えた。
「因みに名は″女帝″です!能力、中々に使い勝手が良さそうなんですよ。褒めてください、エル!」
「……あ、あぁ。能力が気に入ったんなら何よりだ。良かったな」
鞭で1回地面を叩き、名を告げるライラ。
意外にも音が大きく、部屋にいた全員が思わずライラを見たが、彼女は気にせずルヴィへ迫った。
戸惑いながらもルヴィはそれに応え、妙な棒読みで言葉を返す。
嬉しそうな笑顔を浮かべ、鞭──″女帝″を大事そうに抱える。
一連の様子を、俺は複雑な気持ちで眺めていた。
…………いや、女帝て。
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