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校舎を出れば
外は茜色に染まっていて
見とれてしまった。
「おにいちゃんっ!」
「え…?」
校門の前から幼い声が
したと思えば
そこにはランドセルを
背負った三年生ぐらいの
男の子が立っていた。
おにいちゃん?
周りを見渡しても
ここには俺と光しか居ない
そして、それに反応した
のは紛れもなく光。
「危ないから戻ってくるな
って言っただろー。」
「でも、お礼言いたくって」
えへへ、と笑った男の子に
目線を合わせるように光は
しゃがみこむ。
コイツ
弟なんて居たっけ?
あれ、でも、お礼って…。
「助けてくれて、ありがとう
ございましたっ!」
「どういたしまして。」
お礼と共に男の子から
渡された何かを受け取った
光は笑う。
嬉しそうに、無邪気に笑う
やばい。
この茜色の空よりも光の
笑顔の方が綺麗で
見とれてしまうんだ。
「じゃあなー。
って、やぶちゃん?」
「へ、あ…ああ、何?」
「いや、ボーッとしてたから
気になってさ。」
「何でもないから。」
いつの間にか、男の子は
居なくなっていて
また二人きりの空間に戻る
「あの子って…」
「さっき裏門で高校生に
絡まれてたんだよ。」
あ…。
それじゃあ、裏門で倒れて
いた他校生徒って
あの男の子に
絡んでた奴ってこと?
それで
光がその子を助けて
今、わざわざ
お礼をしに来た、と。
『俺が先に手、あげて喧嘩に
なったんだし
それで良いんじゃねっ?』
なんて、どんな思いで
言ったんだろう。
そうか。そうだ。
光はそういう奴なんだ。
「バカ、じゃねーの。」
「やぶちゃんバカですから」
「じゃあ、俺はきっと…」
「ん、なに?」
「なんでもないっ。」
俺はきっと…光バカだよ。
周りが何も見えないぐらい
光の事が
好きだったんだから。
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