第一章:世界の片隅の小さな幸せ

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「とにかく、僕は近くに見に行ってくる」 「あ、それなら俺も!」 「ぼくもいきたいー」 「テトラは止めておいたほうがいいかもしれないのう」 「はえ?」 不意に聞こえた声に振り返ると、ソフィアとミリー、ネールが立っていた。 呼びに行ったミリーはどことなく誇らしげだ。 「……テトラが『闇子』だからですか?」 「そうじゃ。もし、彼らが噂どおり天使だったらテトラが殺されかねん」 闇子――。 それは、漆黒の髪と眼を持って生まれた子供のことだ。 親の髪や眼の色とは関係無しに生まれ、その特異性から災厄をもたらす存在として忌み嫌われている。 彼らのほとんどが驚く程短命であり、虐待などなくとも20になるまでに皆死んでしまうという。 そのことから、世界に嫌われた存在とされている。 「なぜ天使に殺されてしまうのですか?」 「知っての通り、闇子は世界から嫌われた存在だからじゃ。すなわち、神様が嫌いなんじゃ。では、ここで問題。天使とは?」 「神様の下僕……あっ」 「理解したようじゃな。……ワシはここでテトラと見ておる。皆はソフィアと行ってくるが良い。頼んじゃぞ、ソフィア」 「わかりました。皆さん、行きますよ」 ソフィアに促され、ミリーとエンタは大人しく彼女に着いていく。 だが、セイはその場から動かなかった。
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