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ぱたん、と音を立てて絵本が閉じられる。
「ねぇ、しすたー。かみさまはどうなったの?」
閉じられた本を名残惜しそうに見ていた黒髪に綺麗な漆黒の瞳をした幼い少年は、たった今まで自分を膝に乗せて絵本を読んでくれていた女性を見上げた。
「まだ永い永い眠りに就いたままです。だから、世界中で争いが起こっているのですよ」
その女性――ソフィアは茶色い瞳を愛おしそうに細め、その少年――テトラの頭を撫でる。
「ならかみさま、おこさなきゃ!」
「そうですね。そのために、私たちに必要なことは?」
「かみさまをしんじる!」
「はい、よくできました」
「えへへー」
ふにゃっ、とテトラの顔は笑顔になる。
子供らしい、どこまでも純粋な笑みだ。
その笑みにソフィアは更に彼のことが愛しくなり、ギュッと彼を抱きしめた。
「し、しすたー、くるしいよ」
「あら、ごめんなさい」
テトラの苦しそうな声に、ソフィアは慌てて手を緩める。
力が緩むと同時にテトラは一つ息を吐くと、目をこすった。
「むにゅ……」
「テトラくん、眠いのですか?」
「うん……」
「そう……。では、寝ましょうか」
「うゆ……」
ソフィアは船を漕ぎ出したテトラを抱きかかえると、寝室へと向かって歩き出したのだった。
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