第一章:世界の片隅の小さな幸せ

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「皆さん、朝ですよ! 起きて顔を洗ってきてください!」 ソフィアの声と共にカーテンが開け放たれ、光が寝室を満たす。 その光はまぶた越しに目を刺激し、その部屋で眠る者を否応なしに目覚めへと導く。 「むにゃ……」 テトラもまた例外ではなく、まぶたをこすりつつ身体を起こした。 「朝だー!」 「ふみゅ?!」 しかし、何者かによってせっかく起こした身体は再び布団へと逆戻りしてしまう。 「わ、ごめんテトラ」 「うー……。えんたのばかー」 テトラを踏んづけた少年――エンタはバツの悪そうな顔で橙色の髪をかいた。 身体はテトラより大きく、橙色のわんぱくそうな瞳が特徴的だ。 もっとも、身体が大きいのはテトラが3歳であるのに対してエンタが5歳だからなのだが。 「エンタくん、テトラくん。早くしないと朝ごはん食べれなくなっちゃうよ?」 不意に聞こえた声に2人が視線を向けると、部屋の出入り口付近には彼らよりも年上の少女が立っていた。 「あ、みりーおねえちゃん」 「朝ごはん抜きは嫌だ!」 その少女――ミリーの言葉にエンタは血相を変えると、物凄い勢いで部屋を飛び出していった。
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