第一章:世界の片隅の小さな幸せ

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「せいおにいちゃん、うわさって?」 「あの人達、天使らしいんだ」 「てんし? ほわー、すごい! はねがあるのかな?」 テトラの瞳が俄然キラキラとしだす。 それはまさに新しいおもちゃを見つけた子供のソレだった。 「そう、翼を持っているらしいんだ。説法を始めるときに、説得力を持たせるために天使になるらしい」 「へぇー、すごい!」 「なぁ、セイにーちゃん。説法ってなんだ?」 エンタの問いに、セイは呆れたようにため息を付く。 「説法っていうのは、神様を信じてくれるように話すお話のことだ。……まったく、テトラはともかくエンタ、お前は知っていろよ。ネールさんが時々やっているだろう?」 「ああ、アレのことかー。でも、いつも人いないよな?」 そう、ネールが管理する教会――孤児院も営んでいる――でも、時々やっているのだが、いつも来るのはほんの数人だ。 「皆神を信じていないんだからしょうがない。だが、それも今日で終わる」 「なんで?」 「あの人達が来たからだ。あの人達が来ると、その町の人全員神を信じるらしいんだ」 「ほわー! すごいね!」 「だから、その理由を知りたい。噂を信じているわけじゃないけど、その、皆を納得させる方法とやらをおがもうと思ってね」 「セイにーちゃんって、色々考えてるんだなー」 「だねー」 テトラとエンタからの素直な賞賛にセイは頬を染めると、一つ咳払いをした。
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