エピローグ

6/9
2671人が本棚に入れています
本棚に追加
/327ページ
  「それは、何でしょうか」 「野口の殺人が、完全犯罪にならんで済んだって事かもしれんな」 「あぁ、そうですよね」  酒出の重苦しい言葉に、松本は素直に頷いた。  もしも沖田が野口を殺害しなければ、完全犯罪になっていたかもしれない。  酒出はそれを救いと言いつつも、はっきりと断言しなかった。それは、警察官のプライドがそうさせたのであろう。  全ては、野口の暴行事件が隠蔽されなければ。  自分の欲の為や、理由無く無差別に殺人を行う者がいる。そんな輩に、同情する余地など無い。だが、殺人を犯した人間の全てがそうだとは言えない。  殺人を、犯してしまった理由。  時代劇のように、事件が勧善懲悪と言えない時。刑事は、やるせなさを感じるのだ。  今の酒出も、そうであった。  刑事とは、そうした事件をその都度乗り越え。新しい事件へと、立ち向かって行かねばならない。
/327ページ

最初のコメントを投稿しよう!