第二章 容疑者

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  「申し訳ありませんが、今の話しを署の方で詳しく聞かせてくれませんか」 「それって、任意同行って事ですか?」 「えぇ、そういう事になります」 「何ですか? これは、何かの事件の捜査って事なんですか」 「まぁ、その辺りも署の方で詳しくお話しますよ」  有実は、任意同行に素直に従いかけて足を止めた。  二人の刑事は、有実の逃走に備えて密かに身構える。  だが、有実は逃走などしない。  ただ、バッグに手を突っ込むと、携帯電話を取り出した。 「ちょっと、何を?」 「電話ですよ。見ればわかりますよね。それとも任意同行の時には、電話してはいけないとでも言うんですか?」 「いや、そんな事は言わないが」  これから任意同行されようとしているのに、臆する事なく電話しようとする。これは大したタマだが、刑事は別の事を考えていた。  弁護士でも、呼ぶつもりではないか。
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