第二章 容疑者

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   任意同行だから不当逮捕では無い。だが、この段階で弁護士など呼ばれると、捜査する上で何かと面倒だ。  事情聴取をするにあたり、いちいち弁護士を通せと言われたら堪らない。 「あれっ、出ない」 「もう、いいでしょ。とにかく、署まで来てもらって話しを聞かせてください」 「待ってください。とにかく、電話をしなきゃ」  刑事の事などお構い無し。有実は携帯電話を操作し、さっきとは違う番号に電話をかける。  流石の刑事も、逃走は無さそうだと体の緊張を緩めた。 「あっ、もしもし。刑事課に繋いで下さい」 「刑事課だと?」  有実の言葉に、刑事たちが動揺する。  これから任意同行で警察署に行こうという人間が、警察に電話するなどあり得ない話しだ。  警察手帳は提示しているから、刑事だという事を信用していない上での行動ではない。  だったら、何ゆえの行動なのだろうか。
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