第三章 殺害動機

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   端で見ていて、うっとおしい事この上ない。 「有実……」  その原因は、数十分前にもたらされた。彼女である、大槻 有実からの電話であった。  京成線での痴漢の事実。  採取された毛髪に関する事。  それらの不確定要素が多い中。微かにでも、有実が事件に関わるのではないかと疑った。  まさか、それが任意同行にまで繋がる程。現実的に、事件に関与していた事に混乱した。  有実は、関与を否定しているのだが。  だが、遺体の発見前夜に野口と会ったのは事実。 「有実、違うよな……」  そう言いながら、電話では警察の事情聴取に素直に応じ。「ありのままを話せば大丈夫」と、説得力の無い励ましをした。  有実が電話を切る直前に溢した、不安げな声が耳の奥に蘇る。  今の酒口が、すがる事が出来るのは酒出だけ。助けを求めるべく視線を送るが、ルーティーンを続けるばかりで気付いてくれない。
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