第三章 殺害動機

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   酒口は、発狂しそうになる。 「不自然だな……」  酒出が、ポツリと呟いた。  絶望の淵に追いやられた酒口の目に、希望の光が宿り外した視線を酒出に戻した。 「酒出さん。その不自然とは?」  前回酒出と酒口が組んだ事件。資産家婦人狂言誘拐事件でも、酒出のその言葉から解決へ動き出した。  その言葉により、有実に不利な状況になるかもしれない。  だが、有実を信じるなら。酒出が事件解決に導けば、それが彼女を救う最善になると考えた。自力で解決と考えない辺りが、酒口らしいと言えばらしいだろう。 「何故ホシは、遺体を隠さなかったんだろうな」 「ですから、それはカプセルを使用し毒物を服用させた。それで野口氏の死亡時に、離れた場所にいる事が出来たからですよね」  酒出に見とれていた松本が、当たり前の事だとばかりに答える。  それは、以前の話しで結論付いた事であった。
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