第三章 殺害動機

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  「じゃあ、何故その方法をチョイスしたんだ」 「えっ?」 「カプセルを使用する事で、たかだか数時間程度の時間を稼ぐ。それなら遺体を埋めて隠し、その何十倍の時間を稼ぐべきじゃないか?」 「それは……」  松本は、反論しかけて言葉を失う。  酒出の言う通り、遺体を埋めて発見されなければ、事件そのものが発覚しない。  犯人にとってのリスクは、格段に低くなるのである。場合によっては、完全犯罪の成功という事実を手に入れる事が出来る。  遺体を隠さず、完全犯罪失敗へのリスクを犯し。カプセルを使った毒殺を選択したのか。  そこが、不自然なのだと酒出は感じる。 「他にも、不自然な事はある」 「何ですか?」  ここでようやく、酒口が口を挟んだ。  未だ有実の無実を感じさせるような、希望的な話しが出ない事で思わず焦れてそうしたのだ。とにかく、安心する材料が欲しかったのだ。
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